島根県鹿足郡津和野町に鎮座する「太鼓谷稲成神社」は、日本五大稲荷の一つで、アメリカのCNN発表の「日本の最も美しい場所31選 」に選ばれ、天・地・海・木の四つの美しい自然のコントラストが評判になっている山口県の「元乃隅稲成神社」に分霊した神社です。
五穀豊穰・産業発展・商売繁昌・開運厄除・福徳円満など多くのご利益をいただけるパワースポットですが、願望成就(良縁・受験他)は特に強いとされる神様が祀られています。
また、千本鳥居と呼ばれる朱色の千本の鳥居が、トンネルのように参道に連なっている光景は圧巻で、「太鼓谷稲成神社」のシンボルになっています。
島根県では、縁結びとして全国でも有名な「出雲大社(いずもたいしゃ):初詣数約59万人」がありますが、それに次ぐ、約25万人で年間100万人越えの参拝者数を誇る人気の神社です。
津和野は、山陰の小京都と呼ばれる山あいの城下町、津和野川に沿って開けた盆地を「太鼓谷稲成神社」の高台から見下ろせば、赤い屋根の町並みがどこか懐かしさを感じる風情のある場所です。
太鼓谷稲成神社は京都の伏見稲荷大社の分霊を迎えた神社
「太皷谷稲成神社」の創建は、安永2年(1773年)に津和野藩主7代亀井矩貞(かめいのりさだ)公が、津和野藩の領民の安寧のために京都の「伏見稲荷大社」から分霊を迎え、三本松城(津和野城)の鬼門となる東北端の太皷谷の峰に社(現在の元宮)を建て祀ったのが始まりです。
慶應3年7月、津和野乙女山の熊野権現社を稲成神社に移して相殿とし、熊野神社と称するようになりました。
大正12年に現社殿を建立、昭和2年に熊野神社から稲成神社と改称。
旧社格は郷社で、歴代の藩主から崇敬され藩主以外は参拝不可でしたが、廃藩後には一般庶民にも参拝されるようになり、昭和30年代には参拝者の増加も有って、昭和44年12月に境内地西側の山を切り開き新社殿が建立されました。
遷宮斎行後の旧社殿は、「元宮(もとみや:旧熊野神社)」として残し、御分霊をつつしみきよめて祀っています。
稲成と書く稲荷神社は日本に二社だけ
稲荷(いなり)でなく稲成(いなり)の神社は、分霊した山口県長門市の「元乃隅稲成神社」と「太皷谷稲成神社」の二社しか日本にはありません。
稲成の「成」は願望成就の意味が込められている
元来、稲荷神社の稲荷は稲が生えるの稲生(いねなり)が変化し、イナリから稲荷(いなり)と書くようになったと言われています・
「太皷谷稲成神社」の稲成の「成」には、津和野藩主亀井矩貞公がお願い事がよく叶うように「成るように」との意味が込められており「願望成就」「大願成就」の願いが叶いやすい神社となっています。
太皷谷名の由来は太鼓が鳴り響く谷間だった
太皷谷の社名は、津和野城があった一角に位置するこの地は、江戸時代に、時刻を知らせる太鼓が鳴り響く谷間にあったことからこの名前が付けられたといいます。
また、この地は鬼門にあたり古くから神聖な地であったようです。
御祭神は二神の女神
御祭神は、 宇迦之御魂神(稲成大神)と伊弉冉尊(熊野大神)で、この二人の神様は女神とされています。
「太皷谷稲成神社」は、二神の女神から多くのご利益をいただくことができます。
御祭神名 | 神の種類 | 御利益 |
---|---|---|
宇迦之御魂命(うがのみたまのかみ) | 稲成大神 | 五穀豊穰・産業発展・商売繁昌・開運厄除 福徳円満・願望成就・失せ物(紛失物)発見 |
伊弉冉尊(いざなみのみこと) | 熊野大神 | 創造開拓・夫婦円満・良縁成就・開運 病魔退散 延命長寿・鬼門除け・方災除け |
宇迦之御魂命は、日本書紀では倉稲魂命(うかのみたまのみこと)とされ、うかは食物を意味し穀物・食物の神様で通称はお稲荷さんと呼ばれ、稲荷神社の総本社である京都の伏見稲荷大社の主祭神でもあります。
古くから女神とされている。
伊弉冉尊は、日本神話の女神で伊弉諾神(いざなぎ)の妻で、日本の国造り、母なる大地の神として万物を生む力のある神様です。
古事記では、伊邪那美神命(イザナミノミコト)と書かれます。
太皷谷稲成神社は日本五大稲荷神社の一つ!
「太皷谷稲成神社」は、日本五大稲荷神社の一つに挙げられています。
日本五大稲荷神社、日本全土で稲荷神を祀る寺社の内、主要な五社のことをいいます。
日本五大稲荷神社は、以下の神社です。
日本五大稲荷神社イメージ | 神社名 | 所在地 | ご利益 |
---|---|---|---|
伏見稲荷大社 | 京都府京都市 伏見区 | 五穀豊穣・商売繁昌・産業興隆 家内安全・交通安全・芸能上達 | |
笠間稲荷神社 | 茨城県笠間市 笠間 | 五穀豊穣・商売繁盛・家内安全 | |
竹駒神社 | 宮城県岩沼市 稲荷町 | 五穀豊穣・商売繁盛・航海安全 家内安全・交通安全・厄除 安産祈願 | |
祐徳稲荷神社 | 佐賀県鹿島市 古枝 | 五穀豊穣・商売繁盛・家内安全 交通安全・縁結び・必勝祈願 金運上昇 | |
太皷谷稲成神社 | 島根県鹿足郡 津和野町 | 五穀豊穰・産業発展・商売繁昌 |
シンボルの千本鳥居!息を切らせ263段の石段を登る
「太皷谷稲成神社」は、JR山陰線津和野駅から下車後、車で約5分、歩いて約30分程の場所に位置します。
京都の伏見稲荷大社で有名な千本鳥居ですが、「太皷谷稲成神社」にも同様のシンボルとも言える「千本鳥居」があります。
鮮やかな朱色の千本鳥居の参道は、本殿のある高台まで約300mもあり、263段の石段を登ることになります。
比較的斜面が急であるため、息を切らし登っていくことになると思います。
昇って行く途中、鳥居の隙間から見える、津和野の美しい景色が四季折々で赤や緑と変化して、疲れた足を和らげてくれます。
表参道を登り切ると鮮やかな朱色の扉「神門」が本殿へと向かい入れる
千本鳥居の参道を登りきった所に、でんと構えた朱色の美しい「神門(しんもん)」が目の前に現れます。
ここまで来るとかなり高く、眼下を見下ろせば、津和野の特徴である赤茶の石州瓦(せきしゅうがわら)の家が連なり、山の緑・空の青と相まって素晴らしい景観を見ることができます。
石州瓦(せきしゅうがわら)は、三州瓦、淡路瓦と並ぶ日本三大瓦の一つで、島根県の石見地方で生産される粘土瓦。
中央の門は、新年や祭事の時以外は閉じていますので、左右の開いている門から入ります。
境内下まで車で来ることもできる!
本来、表参道の千本鳥居を歩いて登るのがベストな方法だと思いますが、車で境内下まで行くこともできます。
裏参道は舗装されていて、駐車場(約100台:無料)は広く、車を降りれば本殿までは階段一つなので、あまり歩かずに参拝出来るのもこの神社の特徴かも知れません。
駐車場側の龍の手水舎
駐車場から境内に上がる階段そばに、「龍の手水舎(てみずしゃ)」があり龍の口からでる聖水で、身も心も清めて参拝に向かいます。
駐車場から、朱色の鳥居をくぐり階段を登れば境内となります。
納車された新車・中古車の車のお祓いができる!
納車間もない新車や中古車をお持ちなら、交通安全のお祓いがこの駐車場のすぐ側の「車祓所(くるまはらえしょ):初穂料5000円~」で行えます。
ご祈願受けの人には、社紋を金であしらった専用ステッカーが授与され、夜でも輝くこのステーカーを後方に貼っていれば追突防止の役目を果たすそうです。
太皷谷稲成神社の参拝は境内の四ケ所参りが習わし
「太皷谷稲成神社」には、独特の参拝形式があり、参拝に訪れたら境内の四ケ所を順にお参りする「四ケ所参り」が習わしです。
参る順番もありますので、順番通り参拝してみてはいかがでしょうか。
四ケ所参りの順序
一、「本宮(もとみや)」
⇓
二、「命婦社(みょうぶしゃ)」
⇓
三、「新殿(本殿)」
⇓
四、「神殿裏奉拝所」となります。
順路一番目「本宮(もとみや)」
「元宮(もとみや)」は、表参道を登りきり神門を通った直ぐ右横に鎮座します。
「元宮」の拝殿は、古さのある素朴な木の感じと大きな注連縄(しめなわ)が印象的です。
注連縄の上には、龍の彫刻が施されています。
順路二番目「命婦社(みょうぶしゃ)」
元宮の裏には、ある狐様を祀ったお社の「命婦社(みょうぶしゃ)」があります。
御祭神は、白狐神の命婦専女神(みょうぶとうめのかみ)で、稲荷大明神の神令使。
命婦というのは、西暦660年頃から始まった立令制により官僚制が実施され、従五以上の位階を有する女官を内命婦(うちのみょうぶ)もしくは、五位以上の官人の妻を外命婦(げのみょうぶ)の事です。
平安時代以降は、宮人と命婦は区別され命婦の奉仕する対象は内侍司(ないしのつかさ)の努めで、やがて稲荷社の巫女と呼ばれるようになり、中世では、稲荷明神の使いとされる狐様を意味するようになりました。
順路三番目「新殿(本殿)」
昭和44年(1969年)に建て直された「朱色の拝・本殿」は美しく眩しく輝き、「元宮」よりさらに大きな注連縄が存在感を増している。
年間行事の中で、2月初めの午の日に催される初午大祭や5月の春季大祭・11月の例祭・秋季大祭には、境内は参拝・祈願に訪れる多くの人で溢れ変える。
本殿では毎日、五穀豊穰・産業発展・商売繁昌・開運厄除・福徳円満・願望成就・病気平癒・縁結びなどのご祈願を受け付け、ご祈祷が行われています。
順路四番目「新殿裏奉拝所」
「新殿裏奉拝所」は、大神様に最も近い場所で御本殿を背後から拝する神聖なる神域。
本殿の裏なので目立ちませんが、古くより稲荷信仰では、ご祭神は本殿の背後から出入りすると言われており、信仰に篤い方々の心静かなお参りの場所となっています。
稲成大神様のお供え物は狐の好物の油揚げ!
「太皷谷稲成神社」では、稲成大神様のお供え物として「油揚げとローソク」をお供えすることが習わしです。
狐は、油揚げが好物であることから、神の使いの狐様にも油揚げをお供えするようです。
四ケ所参りの参拝所には、それぞれお供え用の献供台と燭台(ローソク台)が設置されていますので、境内駐車場の手水舎前と売店にて150円で購入し、参拝時にお供えします。
油揚げとローソクのお供え方法
本殿参拝を例にしますと、まずローソクに火をつけ、本殿正面両脇の神狐像の前方にあるローソク台に供えます。
次に、賽銭箱の両脇にある御供物台の上に油揚げをお供えします。
お供え後、神社で普通に行う二礼二拍手一礼の作法で、お願いごとを聞いてもらいましょう。
火焚(ひたき)祭は火の霊力により心身を清浄にする!
毎年、12月8日の午後一時から行われる「火焚(ひたき)祭」は、穀神の荒神を春の祈年祭で招き、秋の火焚祭によって山に還られる祭で、火の持つ霊力が罪や穢れを祓い心身を清め、生業に活力を甦らせるものでもあります。
参拝者より奉納された、お願い事が書かれた一年分の火焚串(初穂料1本200円)を大祓を奉唱しながら神職が焚きあげ、願望成就・罪障消滅・万福招来を祈る神聖な儀式です。
津和野周辺の見所スポット
津和野は狭いところに見所が多く密集しており、歴史とアートが共存する観光スポットです。
鎌倉時代に吉見頼行が30年かけて築城した津和野城の跡の津和野城跡や掘割に錦鯉が優雅に泳ぐ殿町通り、幕末の浮世絵師の葛飾北斎と門下生の版画など1000点を収蔵する葛飾北斎美術館など、城下町らしい情緒の漂う津和野の町並みながらも、山陰の美術都市としての顔をみせるアートスポットでもあります。
幼少時代に森鴎外が過ごした森鴎外旧宅や悲劇のキリシタンを慰霊する津和野キリシタン教会も見逃せません!
まとめ
「太皷谷稲成神社」は、島根県ではあの「出雲大社」に次ぐ有名な神社で、境内に鎮座する新旧の社殿や朱色の千本鳥居など美しさと共に多くのご利益をいただけ、「願望成就」の開運にはとても強いパワースポットです。
境内には、この他に御紹介していない宝物殿があり、貴重な津和野藩の天文・算術の大家であった堀田仁助作成の天球儀・地球儀や神狐彫刻・神狐子連彫刻など一見の価値のある多くの社宝や美実工芸品はものが収蔵されています。
「太皷谷稲成神社」の参拝を兼ねて、津和野の見所も訪ねて見てはいかがでしょうか。
太鼓谷稲成神社の詳細
【太皷谷稲成神社】
所在地 | 〒699-5605 |
参拝時間 | 無料・時間自由 ご祈願・車祓所:受付時間(午前9時から午後4時迄)受付:社務所にて |
アクセス | JR:JR山口線津和野駅~徒歩約30分 またはタクシーで約5分 マイカー: |
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周辺観光地 | 津和野城跡・葛飾北斎美術館・森鴎外記念館・津和野町郷土館 津和野町立安野光雅美術館・津和野カトリック教会 |